トレンド気づく更新 2026-08-21
AI APIに「ピーク時価格」が入った——時間帯で単価が2倍になる料金の読み方
LLMのAPI料金は長らく「1トークンあたり何ドル」という一本値でした。そこに、電気やタクシーのような時間帯別料金が入りました。DeepSeekが2026年8月17日から、ピーク時はオフピークの2倍という単価を適用しています。しかもピーク時間は、日本時間の午前10時〜午後1時と午後3時〜午後7時です。日本の業務時間とほぼ重なります。この記事では、公式料金ページの原文で確認できた単価と時間帯を整理し、単価一本値で作った月額見積もりをどう直すかを書きます。
この記事が役に立つ人
- LLMのAPI費用を月額で見積もって稟議に出している人。見積もりの前提が1つ増えます
- コストの安さを理由に特定のモデルを選んだ人
- バッチ処理の実行時刻を、特に意識せずに決めている人
当てはまらない人
- OpenAI・Anthropic・Googleだけを使っている人(この3社の単価に時間帯の区別はありません)
- 月の請求額が数百円規模で、倍になっても影響が小さい人
- 対話UI(ChatGPT・Claudeなどの定額サブスク)しか使っていない人
時間帯で単価が2倍になる料金体系が、実際に始まった
DeepSeekは2026年8月13日にAPI料金の改定を発表し、8月17日午前1時から新しい料金体系を適用しました。変更の中身は2つあります。単価そのものの引き上げと、時間帯別の「ピーク時価格」の導入です。
報道では引き上げ幅が「最大12倍」と表現されています。ITmediaの記述は「従来価格に比べ、DeepSeek-V4-Proで入力約12.1倍(キャッシュヒット)/約3.0倍(キャッシュミス)、出力約4.5倍となるなど大幅に値上げした形だ」です。
| 項目 | 従来(8/16まで) | 新・オフピーク | 新・ピーク |
|---|---|---|---|
| V4-Flash 入力(キャッシュヒット) | 0.0028 | 0.007 | 0.014 |
| V4-Flash 入力(キャッシュミス) | 0.14 | 0.22 | 0.44 |
| V4-Flash 出力 | 0.28 | 0.66 | 1.32 |
| V4-Pro 入力(キャッシュヒット) | 0.003625 | 0.022 | 0.044 |
| V4-Pro 入力(キャッシュミス) | 0.435 | 0.66 | 1.32 |
| V4-Pro 出力 | 0.87 | 1.98 | 3.96 |
この表で押さえておきたいのは、オフピークに逃げても従来価格には戻らないことです。V4-Proの出力は0.87ドルから1.98ドルになっているので、ピークを完全に避けられたとしても2.3倍です。「ピークを避ければ元どおり」ではありません。
もう1つ。比較記事や料金早見表に載る数字はオフピーク側になりやすいです。上の表でいえば「出力1.98ドル」のほうが目に入ります。実際に払う額は、いつ動かしたかで決まります。
ピーク時間は日本の業務時間とほぼ重なる
時間帯別料金そのものは珍しい仕組みではありません。問題は、その時間帯が誰の生活時間に合わせて引かれているかです。公式の記載はUTC基準なので、日本時間に直します。
| 時間帯(日本時間) | 区分 | V4-Pro 出力単価 |
|---|---|---|
| 0:00〜10:00 | オフピーク | 1.98 |
| 10:00〜13:00 | ピーク | 3.96 |
| 13:00〜15:00 | オフピーク | 1.98 |
| 15:00〜19:00 | ピーク | 3.96 |
| 19:00〜24:00 | オフピーク | 1.98 |
つまり平日の日中、社内のユーザーがいちばん触っている時間がまるごとピークです。ピークを避けられるのは、夜間や早朝に回せるバッチ処理だけです。対話UIやチャットボットのように、人が使う時間にしか動かないワークロードは、ほぼ全量がピーク単価になります。
逆に言えば、日次のバッチや埋め込みの再計算のように時刻を選べる処理は、実行時刻を動かすだけで単価が半分になります。これは今日から効く話です。
当サイトが掲載している3社の単価は、時間帯で変わらない
ここで前提を明示します。当サイトのLLM料金計算機が掲載しているのは、OpenAI・Anthropic・Googleの3社だけです。DeepSeekは掲載していません。理由は、料金ページの原文を継続的に確認して単価を保つ対象を3社に絞っているためで、掲載を増やす予定は今のところありません。この記事のDeepSeekの数字は、下の出典から直接読んだものです。
そのうえで、掲載3社の現在の単価を見ておきます。ここに並ぶ金額には時間帯という概念がありません。何時に投げても同じです。
出力単価の安い順 — 料金データから自動更新(1ドル154.25円で換算)
掲載3社のモデルを出力単価の安い順に並べたもの(毎日自動更新)
| モデル | 提供元 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| GPT-5.6 luna | OpenAI (GPT) | 31円 | 185円 |
| GPT-5.4 nano | OpenAI (GPT) | 31円 | 193円 |
| GPT-5.4 mini | OpenAI (GPT) | 116円 | 694円 |
| Claude Haiku 4.5 | Anthropic (Claude) | 154円 | 771円 |
| Gemini 3.6 Flash | Google (Gemini) | 231円 | 1,157円 |
単位は100万トークンあたり。日本語は英語より多くトークンを消費するため、同じ文章量でも請求は上振れします。
この「時間帯で変わらない」という性質は、あまりに当たり前だったので誰も条件として書いてきませんでした。時間帯別料金の事業者が現れた以上、単価を比べるときの条件の1つになります。
自分のワークロードのトークン数を入れると、掲載3社での月額が出ます。時間帯の概念がない前提での金額なので、時間帯別料金の事業者と比べるときの基準線として使えます。
自分の使い方で月額を計算するLLM API料金計算機・入力3つ・無料
見積もりの直し方——一本値をやめて、時間帯の比率を入れる
時間帯別料金の事業者を使っている場合、「単価 × 月間トークン数」で作った見積もりは、実額との差が最大2倍になります。直し方は難しくありません。
- 1. ワークロードを「時刻を選べるもの」と「選べないもの」に分ける:バッチ処理・定期集計・埋め込みの再計算は選べます。対話UI・社内チャット・APIの同期呼び出しは選べません。まずこの2つに仕分けます。
- 2. 選べないほうは、全量をピーク単価で見積もる:人が使う時間はピークとほぼ一致します。オフピーク単価で見積もると足りません。悲観側に寄せておくほうが、後で稟議を作り直す手間が減ります。
- 3. 選べるほうは、実行時刻をオフピークに移す:日本時間で13:00〜15:00、または19:00以降に移すだけで単価が半分になります。cronの時刻を変える程度の作業で効きます。
- 4. 掲載3社の単価と、ピーク単価で並べ直す:オフピーク単価で比べると安く見えていた選択が、ピーク単価では逆転する場合があります。比べるのは実際に払う側の単価です。
4番目が実務では効きます。オフピークの出力1.98ドルとピークの3.96ドルでは、比較の位置が変わります。単価の順位は、いつ動かすかを決めたあとで確定するようになった、と考えるのが正確です。
最適セレクトの管理人の判断(料金以外は意見です)
私の意見では、この一件で使うモデルを慌てて変える必要はありません。変えるべきなのは見積もりの作り方のほうです。理由は2つあります。1つは、単価の安さだけで選んだ構成は、今回のような改定で一度に崩れるからです。DeepSeekは8月6日の時点で値上げを予告し、13日に発表して17日に適用しました。11日で確定しています。もう1つは、時間帯別料金が他社に広がるかどうかが現時点で分からないことです。追いかけて構成を変えるより、どのワークロードが時刻を選べるかを整理しておくほうが、どちらに転んでも効きます。
まとめ
- DeepSeekが2026年8月17日から、ピーク時はオフピークの2倍という時間帯別料金を適用した
- ピーク時間は日本時間の10:00〜13:00と15:00〜19:00。日本の業務時間とほぼ重なる
- 報道の「最大12倍」はV4-Proのキャッシュヒット入力をピーク単価で従来価格と比べた数字。全体が12倍になったわけではない
- オフピークに逃げても従来価格には戻らない。V4-Proの出力は0.87ドル→1.98ドルで、ピークを避けても2.3倍
- 比較記事に載る数字はオフピーク側になりやすい。実際に払う額はいつ動かしたかで決まる
- 当サイトが掲載しているOpenAI・Anthropic・Googleの単価には時間帯の区別がない。DeepSeekは掲載外で、この記事の数字は公式料金ページから直接読んだもの
- 見積もりは「時刻を選べる処理」と「選べない処理」に分け、選べないほうはピーク単価で置く